森のようちえんから国際交流まで、幅広い社会教育交流活動をご紹介します。

『森のようちえん冒険学校』を読んで

『森のようちえん冒険学校』を読んで(インスタグラムより転記)

奈良県曽爾村、曽爾保育園で保育士  納村拓也

森のようちえんのルーツは1954年、デンマークの一人のお母さんが「子どもたちを幼いころから森の中で自由に遊ばせたい」という願いの実現にありました。

この本の作者は実際にデンマークの保育園を訪問し、そこでの保育を体感してこられました。そこで行われていた一つが「子どもミーティング」。これはおとな(保育)があらかじめ持っているいくつかのプランの中から、午後からの活動を子どもたちと話し合い、子ども自らが決められるようにと参加させている活動です。このように幼い頃より自己選択・自己決定のプロセスが始まっているのです。

 

そもそもデンマークという国は「国民一人ひとりが意見を持ち、自分で物事を考え決定できる自立した人間に育つこと」を目指しています。この自律・自立の考えは幼児期より「自分で考えること、自分で決めること」を生活の中から学んでいるということであり、その為の『選択肢』が数多く与えられているということなのです。自分らしく自分の人生を選択する。その結果が「生きる喜び・仕事への喜び」につながっていくということなのです。その為の個性を伸ばす保育の数々、、、「みんな違ってみんないい」という考えのもと、「出る杭は育てる」ことを大事にしています。また「競争や管理から生まれるものは何もない」とい考え方も一般的で、競争は自分の発展の為に自分自身と。そして大人は子ども一人ひとりの「らしさ」を引き出すアドバイザーなのだと、、、。このような価値観のもと、デンマークの子ども達は大人へと成長していくのです。

 

作者の中能孝則(なかよく たかのり)さんは東京都にある日野社会教育センターで長年勤められた方で、月1回のイベント型「森のようちえん&冒険学校」を進めてこられました。そこでの実践事例の数々にはデンマークの保育の価値観をも色濃く感じることができました。

 

今回はその中から僕が特に印象に残ったところを一つご紹介できればと思います。

 

ある7歳の男の子が手作りの飛び板を仲間が跳んでいる様子を見ていた時のエピソードです。その子は自分も跳んでみたいと挑戦するもうまくできずに悔しがっていました。その後、その子は何回も跳べることができる子を観察。そこからの気づきを元に最終的には空中を舞うことさえできるようになるのでした。少し危険が伴う遊び。怖いというリスクに対して何回も練習し、体得していくことは「自分もできた」という自信と自己肯定感への高まりにつながっていくということでした。

また別の7歳の男の子。彼は負けず嫌いで、友だちのしていることは自分もやってみたいと思う性格の子でした。自分も飛び板をしたいと思い挑戦するも、自分の番がくるとなかなか踏み台に乗ろうとしないのです。やがて彼は飛び降りる瞬間に自分の身長よりも高いことに気付き、引き返します。その後何度も挑戦しようとするのですが、彼は最終的に大きく息を吸って「やっぱりやめる」と判断し、低い方の飛び板に挑戦するのでした。彼の判断には挑戦する勇気と同等の「やめる勇気」が必要であるといことが感じられたエピソードだったということでした。

上記のような体験の積み重ねにより、子どもは危機察知能力、危険回避能力、そして想像力、判断力、行動力などを身につけ、そして最終的には人生を楽しむ為に注意しなければならないとっさの判断力の育ちにもつながっていくということなのでした。

 

危ないからさせない。ケガをさせたら可哀相。だったらやる前から子どもの行動を止めてしまおう。そのような価値観が子育てにおいて蔓延しているように僕は感じています。なので子どもたちは実際に経験できていない。ケガの痛さも、危険へのさじ加減も。

 

僕が短期大学で学んだ中で今でも覚えている言葉があります。

「子どもは小さなケガをたくさんすることで大きなケガを回避していくのだ」と。

正にこの「小さなケガ」にはとっさの判断力の育ちに欠かせない要因がたくさん含まれていることでしょう。小さなケガは非常に重要になってきます。

 

しかし、ここで注意してほしいことは、僕は何もただ単に小さなケガをたくさんすることを推奨しているわけではありません。

どのようなことであれ、子どもがその遊び、行動からの気づきを感じ取れるまで、信じ、見守り、大人はいつでも援助できる体制にあるという心構えを持ち続けるべきだということです。その過程で負ってしまった小さなケガについては、その子にとって必要なケガであったと。そういった大人側の度量の大きさも必要であるということを僕は伝えたいのです。

 

「アフォーダンス」

それは自分の今持っている限界に挑戦して、自分の能力を高めていこうとする行為のことを言います。子どもの遊びにはアフォーダンスがたくさん含まれます。「危ないからやめなさい」と言いたい気持ちもわかりますが、そこは「ゆっくりゆっくり慎重に」と励ましながら、積極的に挑戦させようと。

この本からの学びは僕の心の度量を広げてくれたと、そう感じました。

 

ここらは中能のコメント

また、納村さんは曽爾村の郷土芸能、曽爾の獅子舞(獅子踊り)の継承と普及に尽力されており。子どもから大人まで楽しみにしている祭りです。そして、曽爾村の獅子舞(獅子踊り)は、その種類の豊富さと芸能の質の高さが評価され、昭和54年(1979年)に奈良県無形民俗文化財に指定されています。写真は納村さんが獅子頭を持って演じている場面です。是非本物を拝見したいものですね。

 

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