シニアからシルバー世代の皆さんと社交ダンスを楽しむようになって20年になりますが、正直に言ってこんなに長く続くとは想像もしていませんでした。その理由は、「なかなか覚えてもらえない」の一言です。「お客様が悪いのではなく指導が未熟である」と自分に言い聞かせても、なかなか先に進めなくて悩んでいるときに、次のようなお便りをいただき励まされたことがあります。
「覚えられない、覚えられない、何回やっても覚えられない、覚えたかなと思ったらすぐに忘れるダンスかな。されど継続は力なり、今チャンスが訪れた。」
10人十色と申しますように、人はみんな違っていて当たり前、しかし、またそのことに気が付かないのも人間ではないでしょうか。当センターのダンス教室は、現役時代にどのような立場にあった方でも、「ここにきたらただの人であること」を大切にしています。
日々の生活をより豊かにするためには、ただの人になって常に学び続けようとする姿勢が大切ではないでしょうか。そのような気持ちになれた方は、不思議なくらいに順調に覚えていきます。そして仲間の輪も広がっていきます。
私たちは、指導するというよりも、積極的に自分の生き方を選択していただくためのきっかけ作りをお手伝いさせていただくと共に、わくわくしながら次の出会いを楽しみに待っていただける施設でありたいと考えています。これからの人生は、ただの人になりきれるところを見つけ出すこと、ともに学び続ける仲間がいるところに出会うことではないでしょうか。
そして、幾つになっても「今チャンスが訪れた」と思える自分でありたいです。
2007年9月、日野社会教育センターの体育室において“日野市ボールルーム協会、宮崎春男会長”主催のダンスパーティーが行われましたが、今回はいつものパーティーとはちょっと違っていました。
それは、当センターダンス教室の卒業生で、今年満100歳を迎えられる柴田茂登雄さんの誕生日を祝うダンスパーティであり、柴田さんのデモンストレーションがあったことです。
日頃は杖をつき身体を少し丸めながら歩いていらっしゃる小柄な柴田さんの姿を拝見していますが、この日は黒のズボンに真っ赤なシャツに身を包み凛々しくその出番を待っていらっしゃいました。
そしていよいよそのときが来ました。多くの皆様に拍手で迎えられた柴田さんは、背筋をピシッと伸ばされ、パートナーの先生を相手にまるで別人のように1曲のルンバを踊りきりました。そして多くの方が、感動と共に絶賛の拍手をおくりました。
まさに、詩人サムエル・ウルマンの『青春』そのものでした。『年を重ねただけでは人は老いない。人は信念とともに若く、人は自信とともに若く、希望ある限り若く、失望とともに老い朽ちる』とあります。(一部抜粋)
柴田さんは、「ここまで来たら生きられるだけ生きてみたい、これもダンスと皆さんのおかげです」とニコニコしながら話してくださいました。まさに青春真っ盛りといった感じです。
このことこそが、生涯学習の真髄ではないでしょうか。ひの社会教育センターでは、会員・利用者・市民の皆様と共に、生涯学習の花を少しずつ開かせて行くお手伝いをさせていただきたいと考えています。