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手作りヨモギ餅(春の恵みを味わった舌の感覚は今も健在である)


話は60年前にさかのぼることになる。甑に春が来ると祖母に連れられてヨモギを摘みに出かけたことを思い出す。ヨモギは日当たりの良い畑の土手や小川のふちなどどこにでも生えていた。太陽に照らされたヨモギの葉っぱや茎に生えている銀色の産毛がきらきらと輝いてとても綺麗だった。

祖母は見つけたヨモギを手際よく摘んでいたので私も真似をして適当に摘んでかごの中へ入れた。すると祖母から「今摘んだヨモギは食べられない」と一言。

どのように摘むのか聞いてみると、「ポキンと折れる部分から上が美味しい」と教えてくれた。それからは、利き腕である右手の親指をテコの代わりにしてポキンとおれる部分から摘み続け、30分もしないうちに手持ちのかごは一杯になった。

持ち帰ったヨモギは、一緒に摘んだ枯草などを取り除き、きれいに洗ってザルに並べた。簡単に食べられるのは、衣をつけて揚げたてんぷらである。祖母からは、「お腹の掃除になるからよく噛んで食べなさい」と言われた記憶があり、生では苦くて食べられないのであるが、てんぷらにすると、やや苦みはあるものの実に美味しいものであった。

社会人になってから調べてみると、ヨモギは薬草の女王と言われており、血液をきれいにしたり、腸内環境を整えてくれたり、便秘の解消になったり、冷え性予防や老化防止などに効果があるといわれていて、幼い時に聞いた祖母の話もまんざらでたらめではなかったようである。

ヨモギ餅を作るのは少々手間暇がかかる。湯がいたヨモギを冷水にさらしあく抜きをしたものをまな板の上にのせて、繊維がなくなるまで包丁でたたき続けるのである。そして蒸かしたもち米と一緒についていく。出来上がった緑一色のヨモギ餅は香りも豊かで格別の味がする。中にアンコでも入っていたら言うことなしである。またうるち米の粉と一緒に練って蒸していくとヨモギ団子の出来上がりである。

また、ヨモギ茶は、生で飲むもの、乾燥して飲むものがあるが、子どもの口には合わなかったことを覚えている。さらに乾燥して繊維をとりだして作るお灸用のモグサなどが代表的なものである。

もう一つ記憶に鮮明に残っていることがある。それは山に出かけて擦り傷や切り傷を負った時に、先輩がヨモギの葉を摘んできて石でたたき、それを傷口に当ててくれたことである。そこでヨモギには血止めの効果もあることを教わった。

さて、このGWには孫と一緒にロッキーに行ったが、銀色の産毛をまとったヨモギが沢山生えていたので、孫と摘んで初日はてんぷらで食べ、二日目にはヨモギ餅を作って食べた。そこで、美味しそうに食べている孫に一言「ヨモギはお腹の掃除になるからよく噛んで食べなさい」と。60年前に祖母から聞いたことをそのまま伝えている自分がそこにいた。

今年はヨモギにプラスして、ハリギリの芽、うどの芽、も頂くことができたが、一人でも多くの子どもたちにこのような体験をして欲しいと願いつつ、今年も春の恵みを味わった。

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