田舎の生活にタイムスリップしてみると懐かしい生活様式が思い出される、その一つに火吹き竹がある。長めの火吹き竹だけは五右衛門風呂を炊くときの必需品(写真上段)で、短めの火吹きだけは土間にあったかまどで使われていた(写真中断)。写真下段は竹の曲がり具合が気にいったので只今制作中の竹)
この火吹き竹も最近ではキャンプの時の火おこし以外は必要性を感じないが、火吹き棒という名で調べてみると、数百円のものから1万円くらいまでさまざまであり、伸縮して持ち歩きしやすい物から長いものまでデザインも豊かで個性あふれるたくさんの種類が販売されている。ここまでくると実用品というよりコレクションではないだろうかと思うこともある。
また、火吹き竹を調べてみると、なんと千円から3千円くらいまでこれまたバラティーに富んだものが販売されているから驚きである。
しかしここで紹介する火吹き竹はまだどこでも見たことがないような気がする。となると私の生まれ故郷である甑島のオリジナルではないだろうか。と勝手に思い紹介させていただきます。
その特徴は先端部分の二本の角である。なぜ角があるのか小学生のころ父に聞いたことがあるが、父からは二つのことを教えてもらった記憶がある、一つ目は竹の先端で生火を押したりずらしたりするときに、この角があることで、竹の先端の穴の部分が焦げないようにしてあるとのことであった。もう一つは息を吹きかけると竹の先端に空いている小さな穴から勢いよく風が出るのであるが、角のあるおかげですきまから周りの空気を吸い込んだ風が勢いを増して出ていくとのことであった。
二つめの理由については検証したわけではないので、正しいかどうかは定かではないが、小さい時に教わったものは今でもしかりと記憶に残っていて、竹とノコとキリと節を抜く鉄の棒があればすぐにでも作ることができる。
最近では田舎でも風呂に入る前にお湯用の蛇口をひねれば数分で風呂に入ることができ便利である。しかし私は、田舎に帰ると今でも五右衛門風呂を薪で焚いてもらうことがある。火吹きだけはその風呂を焚くときの必需品であり、所定の場所に鎮座している。また、薪で沸かした五右衛門風呂にはいると身体の芯まで暖かくなり湯冷めもしないような気がする。
たかが火吹き竹、お金を出せばすぐに買えるこの時代であるが、記憶の根底にあるのは生活の不便さを解消するために先人たちが知恵を出して作り出されたものである。生活は便利な方が良いことは百も承知であるが、便利さに隠れて知恵を出す機会が少なくなってはいないだろうかと思う今日この頃である。
ロッキーハウスでのBBQやたき火には今でもこの火吹き竹を使っており欠かすことのできない友である。